雪室を活用した食品の貯蔵および雪中貯蔵品の販売
秋田県湯沢市大町1-2-26 鈴木ビル2階
雪室を活用した食品の貯蔵および雪中貯蔵品の販売
秋田県湯沢市大町1-2-26 鈴木ビル2階
全国屈指の豪雪地帯、秋田県湯沢市。大量の雪は、春には豊富な雪どけ水となり、野菜、果物、稲などの農産物や酒どころ湯沢の銘酒を育む一方、雪害をもたらす悩みの種。この「厄介者」である大量の雪を逆転の発想で商品化に活用する取り組みが行われています。
2021年に発足した「秋田・湯沢 雪中貯蔵協会」では、地元伝統の食料保存の知恵「雪中貯蔵」に着目。雪室で貯蔵して甘味やうま味を増した野菜や果物、地酒など、さまざまな食品を販売しています。
活動を始めたきっかけは、2020年から翌年にかけて発生した大雪の被害。同協会の会長、吉村和幸さんは降り続ける雪に疲弊しながらも「この大量の雪を何かに利用し、プラスの資源に変えられないか」と考えました。
市が開設する中小事業者向けの経営相談窓口「ゆざわ-Biz」を訪れ、アドバイザーに相談する中で吉村さんは雪中貯蔵のことを思い出しました。
「冬になると、ばあさんが雪の中からキャベツを持ってくる。子供の頃、これが当たり前の光景でした。この辺りでは野菜や果物を雪の中に埋めたり、新聞紙やビニールでくるんでコンテナに入れ、雪をかぶせて保存するんです。それを自家用として消費する。雪中で貯蔵すると糖度が増しておいしくなる。これを地元だけで消費するのはもったいない。首都圏などに売り出そうと話が弾みました」。
市内の複数の事業者に参加してもらい、多彩な商品をそろえる地域ブランドに発展させようと構想が固まりました。
協会を発足した2021年は、隣町の事業者の雪室を借りて野菜やりんご、米などを試験的に保存。甘み、うまみを増した貯蔵後の変化に手応えを感じました。
本格的に事業化に着手した2022年。山間の同市皆瀬(みなせ)地区に20フィートの輸送用コンテナ1基を設置し、コンテナの内外を大量の雪で覆って雪室を造りました。市内の約10事業者が参加して「蔵入れ」を開催。貯蔵品も野菜・果物・米に加えて、日本酒やクラフトビール、味噌、お茶の葉、珈琲豆などに拡大し、雪中貯蔵品として販売し好評を得ました。
2023年には、コンテナを2基に増設し、平野部の八幡(やわた)地区に移設。新たな取り組みとして地元のブランド和牛「みなせ牛」の雪中貯蔵にも挑戦するなど、手応えを感じながら徐々に活動の幅を広げています。
数週間から数カ月の貯蔵を経て蔵出しする食品は「甘さやうまみが増している」と好評。参加事業者も商品数も増え続けています。吉村さんは「もっと雪室を増やして多くの事業者を巻き込み、地域全体で活動を盛り上げていきたい」と意気込みます。
雪室内は、常に気温0度〜1度に保たれ、中にも雪を入れているため高湿度。電気やガスを使用しない「天然の冷蔵庫」で、食品をみずみずしく保ちながらじっくり貯蔵・熟成できます。
野菜や果物は、寒さから身を守ろうと糖度を蓄えるためより甘くなるといわれています。りんごは貯蔵前に12.9度だった糖度が17.7度にまでに上がったということもありました。大根に至っては、都内の高級イタリアンの料理長に試食してもらったところ「梨のように甘い!」と驚かれました。
日本酒は、低温熟成されて丸みのある味に。
珈琲は酸味が抑えられてまろやかになり、ほのかな甘さも感じられます。
協会には「雪中貯蔵を軸に湯沢の知名度を上げ、地域を活性化させる」というビジョンがあります。
「今後は参加事業者がコラボしたセット商品の販売、雪中貯蔵食材の料理が味わえる飲食店の整備、食と雪中貯蔵、豪雪地帯の景観などを組み合わせた観光振興などに挑戦したい。雪のおかげで、湯沢には食材も豊富にある。豪雪地帯だから楽しめるおいしさや観光をたくさんの方に体感していただきたいですね」。
今や雪は、地域の希望。
雪国の人々の知恵とたくましさ、厳しい自然環境が魅力あふれる「宝」を育んでいます。
2022年シーズンは、クラウドファンディングサイト「CAMPFIRE」で雪中貯蔵品の先行予約販売を行い、おかげさまで目標金額の145%のご支援をいただきました。※下記「商品詳細はこちら」からプロジェクトページをご覧いただけます。
豪雪地域・秋田県湯沢市で雪を活用した地域活性化に取り組む。コンテナの内外を大量の雪で覆い、「気温0度、湿度約90%」の貯蔵空間を実現。雪中貯蔵により糖度やうま味が増すといわれる食品を県内外に販売。2022年シーズンは、都内高級レストランや新幹線を活用した首都圏への商品展開など精力的に活動中。