川連漆器の製造卸販売
秋田県湯沢市川連町大舘35-1
川連漆器の製造卸販売
秋田県湯沢市川連町大舘35-1
湯沢市川連地区は、秋田でも特に雪深い地域として知られています。近くに雄大な皆瀬川が流れ、漆器の材料であるトチやブナを運ぶのにも適していたという地理的条件も恵まれたことから、川連地区では古くから冬の農閑期の内職として漆芸が励行されてきました。
川連漆器は今から800年前、鎌倉時代に、農民の冬の間の内職として武具の漆塗りをさせたのが始まりと言われています。江戸時代には、椀、膳、重箱などの器がつくられるようになりました。そこから400年経った今でも生産品の半数以上が日用の器なのはその歴史にルーツがあるのです。以来、川連地域は小物から大物、丸物から角物、箸から家具まで幅広く制作できる産地としても知られています。
昭和51(1976)年には国の伝統的工芸品に認定。半径2キロメートル以内の地域の中に伝統工芸士32名、組合員数89名を誇る地域の主要産業となった川連漆器。その堅牢さと手頃な価格から、実用的な器として今も人々の暮らしのそばにあり続けています。
「川連漆器は工程数でいうと30〜31と言われています」と話すのは代表の佐藤慶太さん。その多くが、塗ったら研ぎ、研いだら塗るの繰り返しです。「塗膜の何ミリかを研ぐことで凹凸が出ます。さらに上塗りをすることで漆が密着して丈夫な塗膜になっていくんです」。下地研ぎのサンプルを触ってみた。見た目に反してザラザラとした感じはなくむしろツルツルとしている。「指で触ってもわからないぐらい繊細な作業なんです」と佐藤さん。
こうしてできた漆器は時とともに透過して艶が加わり、美しさを増していきます。漆器には軽く丈夫で、断熱性に優れ、抗菌作用などの機能性も備わっているといわれており、近年では海外でも人気が高まっています。
佐藤商事では塗りにまつわるすべての工程を自社一貫生産で行っています。この自社一貫生産は川連地区でも唯一佐藤商事だけ。下地塗り、中塗り、上塗りのほかに漆で絵や文様などを描き、乾かないうちに金や銀などの金属粉を蒔く「蒔絵」や、漆面に対して刃物で文様を彫り、この痕に金箔、金粉を押し込む「沈金」などの加飾の技法を持つ職人さんも社内にいるそうです。
塗りの工程が一箇所で見学できる唯一の工房ということで、地域の子どもたちがたくさん見学に訪れるそうです。
「次世代の職人を育てるためにも、特に未来を担う子どもたちに漆器文化を知ってもらうことは重要だと考えています。今後も自社一貫生産にはこだわり続けたい」と佐藤さんは言います。
時代の流れは変わってなお、川連漆器は、地元で燻煙乾燥させた木地を挽いて漆を塗る、実直なものづくりをつらぬいてきました。
それと同時に、産地では常に暮らしに寄り添う日用の器であり続けてきた川連漆器らしさも常に更新され続けています。その一つがユニバーサルデザインの器。安定性が高い形状、老若男女だれにでも使いやすい形を追求した「はんなりカップ」「ひらりカップ」は大きな取手を持ってもいいし、手にかけても使えるもの。
いずれも朱と黒といった定番の漆の色合いに加えて、ピンク(撫子)、グリーン(鶯)、ベージュ(白茶)など多彩なカラーを採用しています。
近年は産地の次世代を考え、ブランド構築と新しい販路を目指して海外事業を含むコラボレーションに積極的に取り組んでいます。2020年から新進気鋭のクリエイターを表彰する国際デザインコンペティションLEXUS DESIGN AWARDのトロフィーの制作に携わっています。木地を銀粉でコーティングし、その上に透漆を塗る白檀塗りという技術を用いたトロフィーは、世界でたった6人しか手にすることのできないものだそう。
現在はTangentのデザインエンジニア吉本英樹さんとのコラボレーションによる家具制作にも取り組んでいるそう。
「コラボレーションで、これまで考えたことのなかった漆器の可能性が拓ける瞬間があるんです。」と佐藤さんは言います。
伝統を更新しながら、新しい可能性を拓く、伝統的工芸品の産地の新たな挑戦は続きます。
800年に渡り生産されてきた伝統的工芸品「川連漆器」の製造卸販売を手掛ける。自社内に職人を持つ自社一貫生産で制作。ライフスタイルが多様化する現代において、常に新しいデザインを提案しながら、漆器が持つ手作り良さ、温もりといった、変わらぬ価値を提案し続けている。