ワイン用ぶどうの栽培/加工飲料の販売
秋田県由利本荘市矢島町元町字郷内39
ワイン用ぶどうの栽培/加工飲料の販売
秋田県由利本荘市矢島町元町字郷内39
秋田県と山形県にまたがる名峰・鳥海山。その裾野で2016年からワイン用ブドウの栽培に取り組むトヨシマファームの豊島昴生さんの夢は、ワイナリーの運営を中心とした地域活性化と、農業を未来へとつなぐこと。夢と希望に満ちた、個性豊かなワインをつくっています。
TOYOSHIMA FARMのブドウ畑があるのは、秋田県由利本荘市矢島地域の静かな山間。約1ヘクタールの畑で赤ワイン用のメルローや白ワイン用のシャルドネなど国際品種6品種を計約4,000本栽培しています。
目を奪われるのは、緩やかな斜面に整然と連なるブドウの枝葉の美しさ。ヨーロッパのブドウ畑を思わせます。豊島さんは、生食用ブドウ栽培で一般的な「棚仕立て」ではなく、海外のワイン用ブドウの産地で主流の「垣根仕立て」を採用しています。
「垣根仕立て」は、草刈りなどの管理がしやすい、糖度、酸味、渋みが凝縮した高品質なブドウが生産できるなどのメリットがあります。「何よりこの美しい景色が気に入りました。ブドウ畑を眺めながら料理とワインを楽しんだり、栽培の解説を聞きながらテイスティングできたりするワイナリーを設立して、地域を活性化することが夢なんです」と豊島さん。夢の実現を目指して朝6時から畑に立ち、ひたむきにブドウと向き合う日々を送ります。
生家は米農家。農業を継ぐ気持ちはなく、都内の大学を卒業後、大阪で会社勤めをしていました。2014年に仕事を辞めてUターン。父の農作業を手伝い、鳥海山を望む棚田の風景を眺めるうちに、都会暮らしで疲れた心が癒えたといいます。「ふるさとの田園風景を守りたい」と思い立った豊島さんは、父に「農業を継ぎたい」と相談。すると「どうせやるなら、新しい農業をやれ」と言われます。
何を栽培すべきか情報を収集するなかで訪れたのが新潟県内のワイナリーでした。ワイン用ブドウの栽培とワインの醸造・販売、レストランの経営などを複合的に行い、人気の観光スポットになっています。長野県や山梨県にもワイナリーを中心とした地域活性の例があると知り、「自分も挑戦してみたい」という思いを抱いたといいます。
秋田県の果樹試験場で1年間、果樹栽培の基礎を学び、2016年から栽培を開始。長野や山梨などの産地でゼロから栽培法を学び、手探りで苗木を育てていきました。
『失敗は何度も経験してきました』と豊島さん。降雪量や降雨量の多さなど、他産地とは条件の異なる秋田の地で、畑と向き合いながらブドウの栽培に心血を注ぐ日々。それでも、困難に直面するたびに、ワインづくりの先人たちの助言や地元の人々とのつながりに助けられたと言います。醸造の委託先もさまざまな人の縁で山形県と長野県の醸造所に決まりました。就農から4年目で醸造を実現し、2020年に初めて白ワインとスパークリングワインを計2,700本生産。県内外から多くの注文が寄せられ、早々に品薄となりました。
日照時間が少なく降雨量が多い秋田県は、ワイン用ブドウの栽培に不向きな土地といわれてきました。それでも豊島さんは前向きです。「海外産のワインには出せない、この土地ならではの味を強みにしたい。ふるさとである矢島地域にこだわるのは、私がここで農業を心から楽しむ姿を見て、子どもや地元の若者に『自分もやりたい』と農業に魅力を感じてもらいたいからです」。
栽培を続けるなかで、良い発見もありました。この畑は日当たりや水はけが良く、土が栄養豊富かつ微生物が豊富であること。鳥海山の清らかな伏流水を栽培管理にふんだんに使えることなどです。目指すは、ブドウを育てる土地の気候風土や環境、つまり「テロワール」の個性を生かしたワイナリーをつくること。豊島さんの目には、海の幸・山の幸ともに豊富なこの土地で、ワインと食、観光がともに発展していく未来が見えているようです。
鳥海山麓の冷涼な環境が育むTOYOSHIMA FARMのワインは、フレッシュさと爽やかな香り、優しい口当たりが特徴。和食など普段の食事にも合わせやすいワインです。白ワインは、魚介料理やサラダなどに合うシャープな酸味が印象的。赤ワインは、オリーブオイルでソテーした肉や魚、煮物などの和食とも相性良し。ワインに込めた夢や希望に思いを馳せつつ、じっくり味わいたい一杯です。
都会からAターンし、ふるさとの田園風景をなくしたくないという想いから2016年にワイン用ぶどうを栽培。試行錯誤を重ね“秋田らしい”ワイン造りに日々奮闘中。将来的にワイナリーの設立を目指している。